(序)この数ヵ月、コロナ禍の中で生きていく私たちにとって免疫を高めることの重要性を強く感じました。そのために舌磨きなどを実践してきましたが、今回は病院で患者さんの口腔ケアや誤嚥予防の指導をしておられる専門家に原稿を依頼しました。ぜひ実践してwith コロナに立ち向かって行きましょう。(F)
新型コロナウイルス予防のための口腔ケアの重要性
お口の中を健康に保つ事が大切と言われる昨今ですが、今、お口の健康状態が生活習慣病や免疫、認知機能、健康寿命及び平均寿命と関係している事がわかっています。たとえば、高齢者の肺炎で最も多いのは誤嚥性肺炎で、高齢者の死亡原因第3位となっていますが、有効な予防策の一つとして「口腔ケア」が有効であると言われています。また、冬に猛威を振るうインフルエンザウイルスによる感染の予防、そして現在はやっている新型コロナウイルスの感染でも、口腔粘膜、特に舌の粘膜に最もウイルスが付くこと*がわかっています。
では、なぜ口腔ケアが大切かというと、しっかり歯が磨けていない、むし歯や歯周病が治っていない、という状態が続くと、口の中の衛生状態が悪化し、口腔内の細菌の数が増えてしまいます。そうすると免疫力が低下し、細菌による炎症を併発したり、口腔内細菌が出す酵素がウイルスを増殖したりする等で様々な病気を引き起こし重篤化させるからです。
そこで、口腔ケアですが、実は大きく分けて2種類あります。
一つは、自宅で毎日行う歯磨きと、もう一つは、歯科で行う専門的なケアです。
実は、むし歯や歯周病の9割は、「歯と歯の間の汚れ」が原因といわれています。しかし、歯ブラシだけでは約60%しか歯の汚れが落ちません。歯と歯の間は磨きにくく、糸ようじやフロスを合わせて使用する事で約80%の汚れを落とす事が可能です。このように、通常一般的に行われている歯ブラシだけでの歯磨きでは、磨き残しが多く、むし歯や歯周病を併発しやすい状況なのです。
そこで、専門家である歯科にかかって磨き残しがないか、虫歯や歯周病がないかを確認してもらい、その人その人に応じて自分に必要な自宅でのケアの仕方を教えてもらう事で、効率よくかつ効果的にお口の健康を維持する事が可能なのです。自分で気をつけていても、100%上手に歯を磨けているとは限りません。そこで、定期的に歯科受診をして、自分で行う口腔ケアが適切にできているのか、またむし歯や歯周病になっていないか確認してもらうのです。日常的な自分で行う口腔ケア、そして専門家による口腔ケアを合わせて行う事で、お口の健康を維持する事が可能になります。口腔ケアでも舌苔(ぜったい)を除去する舌ブラシや、洗口液等の併用も推奨される場合がありますが、お口の健康状態によって日常的にこれらを行うかどうかの判断は、やはり専門家に尋ねたほうが良いでしょう。舌苔は通常健康な人はほとんどつきません。ですから舌苔がついていない場合は無理に舌をこする必要がありません。また、舌ブラシの使用にあたっては、やりすぎると舌の粘膜を痛め本来の防御機能及び自浄作用の低下を招くおそれがあります。どうしても舌ケアを行いたい場合は、ガーゼでやさしくふき取る程度が良いでしょう。また、舌苔は付くには原因があります。口腔内の健康状態の悪化だけでなく、体力や免疫力が落ちている状態、糖尿病や胃腸病、鼻の炎症等原因は多岐にわたっており、舌ケアをしても改善しない場合は、別の原因を考える必要があります。舌は体の健康状態を示す鏡ともいわれる所以(ゆえん)です。
新型コロナウイルス感染を予防し重篤化しないためには、口の健康を保つ事が重要です。お口の健康を保つには、口腔ケアが大切であり、口腔ケアは、自分で日常的に行う歯磨きと歯科の専門家によるケアが共に必要である事、日常的な口腔ケアは、歯磨きと、歯と歯の間をきれいにする事であり、そのため、歯ブラシでの歯磨きだけでなく、歯間を清掃するフロスの併用が大切という事です。また、舌苔がついている場合は、やさしく舌ケアを行って下さい。(O・Y)
*Xu H,et al. High expression of ACE2 receptor of 2019-nCoV on the epithelial cells of oral mucosa. Int J Oral Sci.12(1),8. 2020.
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