2020年9月29日火曜日

「虫」の話

 暑かった夏もようやく一段落したようですが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 


 8月のまだ暑いときから、夜になると虫の声が変わってきて、「もうすぐ秋だななあ~」と感じたときがありました。日本にはまだ、小さくても豊かな自然が残っており、いろいろな感覚を通して時の移り変わりを感じさせてくれるものだと思います。夕方、近くの道を散歩しながら、虫の声に耳を澄ましていると、なんとなく心が落ち着くようなときもあります。

 

 

●「心のスペース」

 ところで、以前ならそんなに気にならなかったことにもイライラする、ということはないですか? そんな時は、心に余裕がなくなっているときが多いと思います。余裕を失っていると、他にも大事な判断を誤る、抱えている問題が大きく感じられてどうしていいかわからなくなる・・・といったことも起こってくるかもしれません。

 目の前の問題に対しては通常、何とか解決しようとがんばるものですが、それでもうまくいかないときは、少し距離を置くことも大切です。解決をあせると、自分の本来の力が滞ってしまい、出来ることも出来なくなります。逆に、心に「スペース」ができると、自由な発想ができるようになりいろんな視点や発想も生まれやすくなります。例えば、理想的な解決よりも、「最悪の状況よりは良くなる」ことを目標とした方がよいこともあるでしょう。問題はすぐには解決しない、むしろ時間を掛けて問題に当ろうと思えることが有効な場合があります。

 

●「心の虫とつき合う」

 日本語には面白い表現が多いと感じますが、「腹の虫がおさまらない」といった言葉もその一つと思います。お腹の中に本当に虫がいたら考えものですが、そうではなく、比喩的な表現ですね。言わんとすることは「怒っているのは自分というよりも、自分を怒らせている虫(=ほかの存在)がいる」ということです。

 これは「スペース」を作る方法のひとつとして有効で、怒りの他にも様々なものがあるでしょう。自分が陥る不本意な状態を、自分に取り付く「心の虫」の仕業と考える。すると、自分の中のイヤな面を、自分に責任のない、虫のせいだと受け止めることにつながります。心理学では「外在化」と呼ばれるものです。

 例えば、自分のなまけ癖が気になる人は、呼んでもいないのにいつの間にかしのび寄る「なまけ虫」がいると考えます。その他、「人のせいにしたがる菌」とか、「おせっかい虫」とか、自分で名前を付け、それらを一つひとつ書き出してみます。 実際にやってみると、「後回し虫」「鼻高虫」「イライラ虫」「ヒロイズム虫」など、普段気になっている自分のいやな面が、虫の形になってゾロゾロと出て来るかもしれません。

 この方法の大事なところは、こうして外在化した「心の虫」を排除しようとせず、「虫さんの気持ちを聞こう」という態度をとることです。「虫さんは自分にどうして欲しいのか」と考えを巡らすことが、自分の内なる声に耳を済ますことになります。

 自分の中に否定的な感情があるときも、その存在を認め、耳を傾け、声を聞くことによって、それに取り組む土台ができ、新たな可能性も膨らんでくるのではないでしょうか。(K)

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