私の周りには、いくつかの鉢植えの植物があります。東日本大震災の時には出窓から全部転げ落ちてしまい、枝が折れたり、土が飛び出てしまったりもしましたが、それでも尚頑張って新しい葉を出し続けてくれました。
その中に、毎年6月半ばになると真っ白な花を咲かせ香りもいいジャスミンがあります。今年も楽しみにしていたのですが、7月になっても8月になっても花の蕾は見当たりません。蕾どころか、春先は新しい葉も出るはずなのに、どこを探しても出ていません。
ジャスミンだけではなく、隣に置いているライムポトスも静かで無言を貫いているようでした。隣の部屋のベンジャミンも、なんか元気がありません。
水はあげているし、太陽の光も充分だし、何が原因なのか見当がつきませんでした。植物たちは春が過ぎ夏が来ても芽も出さず沈黙したままでした。
そんな時、鎌倉の臨在宗円覚寺の横田南嶺管長の書かれた本の中に、寺の敷地内の薄木木犀の枝が枯れてしまった時のことが書いてあるのを見つけました。樹木医の先生は、枯れ枝を切らずに根に栄養を与えただけだそうです。定期的に栄養を与え続けた結果、半年後、一年後には枯れ枝だと思っていたところから芽が出てきたということでした。
ピンと来た私は、すぐ植物たちに肥料をあげました。そういえば、ずっと栄養は与えていなかったのです。一週間後、長い間沈黙していた植物たちが動き出しました。
あのジャスミンからも、ちいさな芽が10個以上吹き出るように出始め、おとなしかったライムポトスもベンジャミンも、次から次へと新芽を出し始めました。
根に栄養が足りなかったのです。
横田管長の文章のタイトルは『根を養うことの大切さを知る』でした。私たちの知らないところで、根っこのように働いて下さっている方々、又寝ている時も健康を取り戻そうと必死で動いている体。もう一度その方々への感謝の気持ちと、自分の体と心への栄養の大切さを教えてもらった出来事でした。
(F)